【104才で安楽死】自死の議論に一石を投じる
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先日の安楽死のニュースでもご紹介したオーストラリア人科学者のデイビッド・グドールさんの情報を詳しくお届けします。
オーストラリアの環境・植物学者デイビッド・グドールさん(104才)は、2018年5月、末期症状を抱えているわけではないものの、生活の質(クオリティー・オブ・ライフ)が低下していたことから、自死を決断。当時はオーストラリアで安楽死は認められていなかったため、自殺ほう助の認められているスイスへ渡航し、鎮静催眠薬ネンブタールの注入によっての自死を選択されました。死生観は人それぞれだとは思いますが、安楽死に関して深く考えさせられる内容です。
植物学者として102歳まで研究を続けた人生
ロンドン生まれのグドールさんは、幼少期に一家でオーストラリアに移住し、スイスに向かう数週間前までは、西オーストラリア州のパースの小さなアパートに1人で住んでいた。著名な環境・植物学者でもあるグドールさんは、世界中で学術的に評価も高く、論文・著作は130に及びます。
オーストラリアの科学産業研究機構(CSIRO)の上級科学者を長く務めた後に、1979年に退職。その後も研究を続け、地球上の生態系についてまとめた「Ecosystems of the World」全30巻の編集に携わったほか、その研究の成果からオーストラリア勲章の称号を与えられている。
2016年には、102歳にしてパースのエディス・コワン大学で名誉客員研究員として研究を続けていたが、大学側から「通勤が危険」なため、研究の拠点を自宅に移すよう提案される。それでも、通勤時間が短くなる別のキャンパスに研究室を確保して仕事を続けられていました。
まさに鉄人!と言ってもいいようなタフさですし、100歳を過ぎてもなお、研究熱心で強い精神力をお持ちで大きな誇りを持って人生を歩んだ方だったのかと想像できますね。
いちど自殺を試みるも・・・
安楽死を検討することになったきっかけは、自宅で転んでも起き上がることができなかったことでした。
2日後に来たクリーナーに助けられ、擦り傷程度で大事ではなかったものの、医師からは「これからはもう自分で道路を渡ったり、バスに乗らないように」と言われてしまう。
今はどこへ行くにも車椅子に頼る生活で、5~10年ほど前から人生が楽しくなくなったと振り返る。
「フィールドワークが私の人生だった。だがもうフィールドへ出ることはできない」
「また草原を歩き回り、周りを見渡すことができたら、どんなに素晴らしいだろう」
もう自分で自分の面倒を見れないし、拘束された生活で人生を続けたくないと思い、一度は自殺も試みたそうです。。。
しかし、目が覚めた時は病院のベッドの上。病院の医師からも、また自殺をすつ可能性があると診断され、精神鑑定を受けるまで退院させてもらえなかった。
自身で選択した幸福な最期/自死の議論に一石を投じる
グドールさんは自死支援団体「エグジット・インターナショナル」で最も会員歴が長く、これまでも同団体のワークショップなどに精力的に参加していたこともあり、自死を決断。自死が認められているスイスの自殺ほう助機関「ライフサークル」に受け入れを申し込み認められた。
グドールさんが自殺ほう助のためにスイスに向かったことから、世界中の注目を浴びることになり、インタビューや記者会見で彼の声を聞くことができる。と言うのも、自らの選択が高齢者の「人生を終える権利」について議論を生むことを望んでいた為である。
直前の会見では、『Aging disgracefully(醜く老いている)』と刺繍した服を着て、「スイスで自殺ほう助のサービスを受けるチャンスを得たことを嬉しく思う」と話した一方、「本来なら住み慣れたオーストラリアで死を迎えたかった」と心のうちを明かした。
パースからスイスへの旅行代金は2万ドル以上の寄付を集めた。
12人の孫の祖父であるグドールさんは、最後のお別れを言う友人や家族らに見守られて、パースで飛行機に乗り込んだ。フランスで親族と会った後に、スイスのバーゼルに到着。そして、自殺ほう助機関「ライフサークル」のクリニックに入った。
人生最期の1日は、3人の孫と共にバーゼル大学の植物園を散策した。グドールさんの最期の晩餐は、好物のフィッシュアンドチップスとチーズケーキ。
息を引き取る際には、家族に見守られながら、ベートーベン交響曲第9番の「歓喜の歌」が流された。死後は葬儀を行わず、遺体は献体するか、地元に遺灰をまくことを望んでいたという。
オーストラリアでは2019年からビクトリア州に限り可能になっています。これまでに、かなりの時間をかけて議論されており、他州に先駆けて2017年に安楽死を許可する法案が可決。そして、2019年6月19日に施行となり、昨年の12月までの6か月間に52人が安楽死となったことが発表されました。これは当初予想していた、最初の12カ月で12人程度を大幅に上回る数字である、とガーディアン紙などが伝えています。
最初の事例の特集記事についてはこちら
【オーストラリアの安楽死事情】半年で52人が実施
グドールさんの特集映像
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